・「医院建築 」に掲載
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その他の作品
1.はじめに
2.医院が住居併用となる事情
3.住居併用医院の分類
4.有床診療所の場合
5.併用の功罪
6.計画・設計上の留意点
7.おわりに
近年医院の開院事情は徐々にその厳しさを増しつつある。筆者が主に設計活動をしている東海地方においても、その傾向を実感させられるケースが増えてきた。まだまだ地域的な差および標榜科目による差は大きいと思われるが、開業地の選定に当たって競合施設からの距離や密度などの競合率を考慮すると、数年前に比べて余裕のあるエリアがかなり減少していることは認めざるを得ない。事業計画においてもそれを反映して、収支の予測を厳しく見て総事業費を圧縮する傾向が見られる。ただ筆者の考えでは、現時点においてはまだそれほど悲観的な見方をする必要はない。特定の地区や場所にこだわらない限り、以前に比べれば多少厳しくなってきてはいるが、さほど深刻な状況ではないと考えている。
とはいえ、近年の開業ラッシュを見ていると数年先にはかなり厳しくなり、考えを改めざるを得なくなるとの思いも強い。標榜科目による差も大きくなり、特に医院数・医師数の多い内科系は、内科医だけでなく他科の専門医が内科標榜で開業するケースも多く、いっそう厳しい状況を迎えることとなるだろう。
また歯科の場合は、すでに10年ほど前に現在の医科の迎えつつある状況に直面しており、以降、大変厳しい開院事情となっている。本稿の主題である住居併用医院は、医科の場合まだ当然で、ビル診療を除く医院は住居併用のものが大多数であるといっても過言ではないと思われるが、歯科においてはすでに競合のきびしさから、事業計画上、住居分の資金投入ができず、医院だけの開業がかなりの割合を占めるようになっている。医科においてもいずれそのような事態を迎えることになるのであろうか。
医院に住居が併設されることの多い理由は前稿(医院建築No.14)でも触れたが、ひとつは転勤の多い医師にとって開業は、定住を決め住宅取得を果たす大きな機会であることがあげられる。住宅を持ち落ち着きたいがために独立開院を決意するケースも結構多い。子供の成長による教育環境や子供部屋の確保、転勤の煩わしさ、生活の不安定感などがきっかけになるようである。
いまひとつは、地域医療の担い手として地域の患者と密着した医療活動をする必要があるという職能上の意識と、積極的に地域の一員になることによって地域住民に認知・歓迎され、開院の成功を期したいという心理的理由による。
経済的事情は住居併用を減らすほうに作用する可能性もあるが、歯科と異なり医科の場合、医院と医師が一体と認識されることの意味が大切で、患者の安心感に及ぼす影響が大きいことと、病院・診療所間の役割分担の明確化や在宅医療促進の政策・傾向も今後、住居併用医院の存在価値を大とするであろう。
併用のタイプは、敷地の持つ条件(広さ・形状・方位・道路位置・法規制や、近隣の土地利用状況・建築環境など)によって左右されることになる。
一般には、限られた敷地の有効利用・駐車台数の確保などのため、接地階(1階)に医院部分、上階に住居部分(それぞれにの主要部分)という重層タイプになることが多い。郊外などで敷地が広い場合には、平面的な併用(1棟分割・別棟)となることもある。また市街地や駅の近くなどの場合、敷地面積の多寡に関係なく土地の高度利用を考えて、診療所+賃貸スペース(共同住宅・事務所・店舗・他の診療所)+住居といった併用タイプとすることもある。さらに敷地面積が充分でない場合などでは、下層に駐車場を設け、その上に診療所・住居をつくるタイプもある。
これらを簡単に分類すると、下の表-1のようになるが、有床の場合とか診療科目・家族構成などの条件とも微妙に影響しあって決まることとなり、必ずしも敷地のもつ条件だけで併用タイプが決まる訳ではない。
診療科目によって病室を必要とする科とそうでない科とがあり、ベッドの有無によって設計時のチェックポイントも変わってくるので、そのあたりもここで整理しておこう。
近年では、病診連携の実があがってきたためか、有床診療所をもつことのリスク(投資金額の増大、採算の悪化、医師の精神的・肉体的負担の増加など)を避けるためか、無床で開業するケースがほとんどである。以前だったら有床が当然だったり、望ましいとされた科目でも、同様である。ごく一部の近年でも有床開業される例としては、肛門科・産科などがあげられよう。以前だったら有床の多かった整形外科なども、最近では無床開業のケースがほとんどである。
有床の併用医院の計画で気をつけなければならない点は、出入口の増加とそれに伴う入院部分とその他の部分の管理およびセキュリティの問題、住居部分で発生する音などの問題があげられよう。
複合用途(併用)の建物を計画する場合、どのような用途・どのような併用であっても、当然、複合することの理由を十分理解し、満足することはもちろんであるが、複合によって生ずるメリットを最大限に生かし、デメリットをいかにおさえるかということが、ポイントとなる。そのためにはまず、併用されるそれぞれの用途が単独でつくられる場合に要求される条件を整理し、複合することによって生ずる条件変化を正確に把握する必要がある。その上で計画建物に対する明確な設計条件の設定、コンセプトの確立をすることが大切である。複合による条件変化に対するメリット・デメリットの判断は必ずしも単純なものではない。住居の側からの視点と医院の側からの視点で功罪が逆転するものもある。何をメリットとし、何をデメリットと認識するか。
医院が住居と併用することによって生ずる条件の変化としては、
などがあげられよう。 これらの条件の解決を前提として、医院部分、住宅部分のそれぞれが個々に要求する条件を満足する必要がある。各々の必須条件は、 医院建築としては、
住宅建築としては
などがあげられる。
建物の大型化は、施設の周知度を上げる効果や経済的側面(住居と医院を別々にすることと比べ建築費・維持費とも安くすむ)などのメリットにつながる。アプローチの複雑化やプライバシーの問題はマイナス要因であるが、併用のデメリットにならない上手な処理が要求される。用途の不明瞭化はマイナス面もあるが、近隣の環境によってはあまりにも医院然とした建物は好ましくないケースも多い。住居の方のもつべき性格である奥ゆかしさや温かさなどの感じられる建物にするなど、付近の環境や佇まいに対して配慮することも大切なことである。
これまで述べてきたように、併用のパターンはさまざまな条件の組み合わせで決まり、それぞれに留意点のウエイトも異なる場合も多く、一概に論じにくいところがある。ここでは最も一般的な重層タイプについてチェックされるべき事柄ごとに留意点を述べ、他のタイプや条件(有床無床のちがいなど)によって特に差異の大きな場合については、その後に述べる形で論を進めたい。
この、規模の違いによる住居の扱い方によって、建物はその表情や雰囲気を大きく変える。住居部分をすこしセットバックさせることによって得られるプライバシー・屋外スペース・陰影などは、建物を大変豊かで使いやすいものとする。
併用という究極の職住近接は、個人の生活という観点から見ると、評価のわかれるところであろう。通勤時間はゼロであり楽だし、何かと便利だという点など、切り替えが上手にできればメリットの側面もあるが、24時間、医師としての立場を忘れにくいという負担もある。医師も生身の人間である以上、体調の優れない時、疲れている時、飲酒時、来客時、家族との団らん、趣味の時間などなど、侵されたくない時間もあろう。併用となればある程度侵害されることを覚悟しなければならない。もちろん医師の使命として甘受すべきことと割り切っている方もあろう。しかし、家族も含め、生活のある部分が注目されやすいということは、大きな負担である。それゆえ、住居併用医院の計画に当たっては、そういった状況を理解し、機能的で快適な診療スペースはもちろんであるが、医と住との間での切り替えの演出、落ち着いた安心感と伸びやかな開放感もつ住空間を提案していかなければならない。
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